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【実証レビュー】ヒトとヒトを繋ぎ、空き家の利活用へ

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秋には黄金の絨毯があたり一面に広がるすすきで有名なまち、神河町。 

人口11,000人のこのまちの中村・粟賀地区には、かつて宿場町として栄えた風情ある街並みが保存されている。しかし、高齢化にともない空き家が増加。建物の老朽化も進んでおり、景観の保全が喫緊の課題となっている。

中村・粟賀地区は「歴史的景観形成地区」

空き家を活用しつつ、中村・粟賀地区の歴史ある街並みを保全したい。この課題にHITOTOと神河町は一丸となって立ち向かう。

一般社団法人HITOTOとは

  • HITOTOは「ひとと」と読む。社員2名の一般社団法人。2021年設立
  • HITOTOは、古民家や地域資源を活用し、地域のお店を集めたマーケットイベントの開催、商店街の一角を間借りした無人古着販売、空き家を活用した私設図書館の運営などを行い、新たなビジネスモデルを構築している。
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  • 今回の実証では、古民家という地域特有の文化資源を守りつつ、新たなビジネスモデルやコミュニティ形成に挑戦。都市部と地域をつなぐワークショップを通じて、地域活性化の新たな可能性を模索する! 

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【実証①】神河町移住者によるトークイベント 

場所:神戸市 起業プラザひょうご 12/16(月)

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01. 月曜の夜だったけれど、21人が申し込んで来てくれました

02. イベント後。ほっとした表情のゲスト小森さん。素敵なお話でした

03. 足立さんが経営する雑貨屋さんの写真を見せてもらっています

04.ファシリテーターを務めたHITOTO山本さん

05.ゲストと参加者の交流

06.神河町役場 真弓さん

07.08.真剣にアンケートを書いている参加者さん

09.「地元の食材をどうやって仕入れてるんですか?」「農家さんに直接コンタクト取ってますよ」

10.神河町まちづくり協議会のみなさん

11.参加者には神河観光マップをプレゼント

12.「ゲスト同士も繋がってほしい」と、山本さん

12月16日の夜、神河町で自分らしく生きるローカルな人たちによるトークイベントを開催。場所は神戸市。

イベントには、空き家や古民家活用に興味がある、移住を考えている、地域活性化に携わりたいなど、それぞれの思いを持った21名が参加した。

神河の食材が世に出回っていないなんてもったいない!―――― 河野さん

いずれは神河に作家の拠点となる場をつくりたい―――― 足立さん

カフェでは、神河のおっちゃんが好きそうな商品を

取り扱ったりするくらい、地元を大切にしています―――― 小森さん

山本 まず、神河町で事業を始めたきっかけを教えてください。

河野 神河町は中小規模の農家が多く、有機栽培にこだわっています。そんな地元の食材が世に広まっていないことにもったいなさを感じていました。こうした中、妹からジェラート屋を一緒にしようと言われたことでUターンを決め、一緒にジェラート屋さんを始めました。

足立 私は15年ほど前から田舎暮らしに憧れていました。物件探しから始め、知り合いがいた関係で思いきって神河町に焦点を絞ってからは1、2ヶ月でスピーディーに引っ越しが決まりました。2024年7月から築150年の古民家の一室で小さな雑貨屋をやっています。

山本 実は僕二拠点生活をしていまして、それも正直勢いがあって二拠点生活を始めました。温泉あるしな~みたいな。実際に移住を考える時ってなかなか難しくて‥やっぱり住まなきゃわからないことって沢山ある。だからこそ知り合いの方とか、地縁があってそこを頼りに飛び込んでみるって大事ですよね。では最後に小森さんお願いします。

小森 ミャンマーで6年間海外支援活動を行ったのち、ほんの一時帰国というつもりで帰ってきた直後にコロナでミャンマーがロックダウンになりました。日本に住む決意をし、色んなまちを見て回った結果、神河町にたどり着きました。現在神河でカフェをやっています。

山本 ではみなさん、神河で商売をやってみて何か思うこと、気づいたことはありますか?

足立 私は移住前から雑貨屋を長い間やっていた関係で、知り合いに作家やクリエイターが多いです。まだ構想を練っている段階ですが、いずれは神河町の古民家を改造して、作家の拠点となるようなコワーキングスペースを作りたいと思うようになりました。

小森 友達や海外支援活動時代の知り合いが沢山いるので、そういう人たちがカフェに来てくれるだろうという感覚でいくと、痛い目に遭うと実感しました。カフェをやっていくには、やはり村の人に愛され、村のおじいちゃんおばあちゃんが来てくれるような店でないとやっていけない。だから、神河のおっちゃんが好きそうな商品を取り扱ったりするくらい、地元は大切にしています。

山本 ありがとうございます。やりたいという思いから一歩を踏み出すことが大事だと思いつつ、地域から求められているニーズ、地域がどういうものなのかを知ることって大事ですよね。

山本 続いて、神河町で事業を始めて大切にしていることってなにかありますか?

足立 村の人たちに受け入れてもらうことが一番大事なので、飲み会や村の集まりには積極的に参加し、地元の方との交流は何よりも大切にしています。なにかあってもすぐ飛んできてくれるのが本当にありがたいです。

小森 田舎でカフェを経営すると、「観光客ばかりで地元の人は寄りつかないお店」もしくは「軽トラばかりが来る地元民の溜まり場」のどちらかに陥りやすいです。やはり地域がどういうものなのかを知ることから入るのは結構大事。移住したいという想いだけでは中々難しいです。

山本 最後に、今後神河町にはどんな人に来てもらいたいですか?

河野 自然や田舎暮らしがしたいという方ですね。また、自分たちのように「この地域を盛り上げたい」という熱意を持った人と一緒に頑張りたいです。

小森 村の区長さんからの「わしらは移住者を選べんのや」という言葉に衝撃を受けたことがあります。ひっそりとした田舎暮らしは幻想的なこと。村の付き合いがあるけどそれも楽しめる人が来てくれたら素晴らしいです。

それから、人口流出。進学や就職で神河から離れる人が多いとよく聞きます。こうした中、小さなカフェですが、一生懸命村の人を雇用させてもらおうと頑張っているところです。働ける場所を生み出せる方が来て下さったらそれは素晴らしいだろうと思います。

山本 住みたいけど働くところがないという話はよく聞きます。それも大きな課題だなと。また、移住者と地域の方が共創し、「みんなが同じ船に乗って」まちを作ることが大事だと改めて思いました。今回のゲストの方々のように、面白い人の周りには面白い人が集まります。こういった網がけで繋がりは少しずつ広がっていくのではないでしょうか。

神戸市近辺在住の参加者からのコメント

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【実証②】空き家4軒内覧会・ワークショップ 

場所:神河町中村・粟賀町歴史的景観形成地区 1/25(土)

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01.02「リフォームされていて綺麗!」大松邸、好評でした

03. 幕末に建てられた竹内家住宅に感嘆の声

04.五右衛門風呂もすごいけど、奥の岩もすごくないですか‥?

05.まち歩きも楽しみました

06.近々、図書館と公園ができるみたい

07. ワークショップではやりたいことをひたすら書きました

08 車を走らせ東京から来てくれた、空き家のオーナーさん

09. 夢を叶えるための課題は黄色い付箋に

10. 「僕がお店を始めたのも、人との巡り合わせがきっかけなんです」と、HITOTO中野さん

1月25日(土)神河町の中村・粟賀地区にて、空き家4軒の内覧と、参加者によるワークショップを開催。

3組7名の一般参加があったほか、空き家のオーナーや神河町まちづくり協議会の方々も参加した。

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参加者の声

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神河町役場×HITOTO 連携してみて

神河町役場 真弓さんに聞く

真弓:空き家問題は、一年では終わらない息の長い取り組みです。行政は人事異動で担当職員が変わるため、熱量も職員によって違います。どんな仕事も一緒ですが、空き家と街並み保全の取り組みも、プロパーがいるような息の長い取り組みにしたいなとずっと思っていて。

HITOTOさんがこの先もグッと神河町と関わってくれたらいいな思っています。そして今回のイベントのように、まちづくり協議会や一般の方たちも含めて、集まってくれた人たちで団体的な取り組みが組織として継続できたらなと。まちをなんとかしようよ、という動きがある団体ができるといいなと思っています。

HITOTO 山本さんに聞く

ワークショップを終えて

山本:今回のワークショップ、もう一歩具体的な話に持っていけたらベストでしたが、ひとまずここまで出来て良かったって感じではあるかな。方針が見えたら次に繋げやすいですね。神河町図書コミュニティ公園「桜空(あおぞら)」がオープンするのが2025年7月なので、そのタイミングでもまたこうした集まりができればと思いますし、次回に繋げていきたいです。

まちづくりへのアツすぎる想い

山本:昔、行政の立場で「空き家を使ってください」と営業で回っていました。でも行政の立場から言うのは安全地帯から言っているようで、それがすごく嫌でした。あんたは給料を貰ってるんでしょ?って。そんな立場から、誰かの時間・お金、つまり〝いのち〟を懸けろと言うのは無責任だと思いました。相手と同じ立場になる必要がある。そうでないとやっぱり人には響かない。そう思い、市役所を引退しました。

まちづくりって儲からないけど、将来的にはちゃんと稼げるオープンなマーケットにしたいという思いがあります。まちづくりをやっているとボランティアっていうイメージや、好きだからやっているのだと思われがち。「あなただからできるんでしょ?」と。確かにそれも事実ですが、本来まちづくりは仕組み化さえできていれば、誰でも出来る話。あなたしかできないと言われるとそれは気持ちのいいことだけれど、それって健全な市場じゃないんです。

だから、誰でも出来るまちづくりの仕組みを作っていきたい。ビジネスとして参入すれば誰でもできるようにしていきたいし、そうする必要がある。イベント後のアンケート項目内容を指標化しているのもその一つ。だんだん仕組み化されて誰でも出来るようになっていかなければだめ。関われば関わるほど業界は進化していくものです。

EDITOR’S VOICE 取材を終えて

ワークショップの参加者さんが口にした、「誘われて参加したけど、思いがけず神河町に両足を突っ込んでみたくなりました!」という言葉が印象に残った。地域に関わりたいと考える人を増やし、彼らと共にまちづくりを進めること。これこそ、今回の実証で目指したまちづくりの姿だろう。

ワークショップ参加者の想いや本気度に触れ、刺激を受けたのは筆者だけでなく、まちづくり協議会の方や空き家のオーナーさんも同じはず。「みんなが同じ船に乗って」まちをなんとかしようという機運が盛り上がったことだろう。まさに、HITOTOが目指すまちづくりの仕組み化の第一歩だと思う。

HITOTOと神河町によるまちづくりはここからが本番だ。 (text by 兵庫県新産業課 稲垣海里)